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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)1153号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人青山政雄の上告理由について。

元請負人が下請負人に対し、工事上の指図をし、もしくはその監督のもとに工事を施行させ、その関係が使用者と被用者との関係またはこれと同視しうる場合において、下請負人の使用する第三者が下請工事自体、その附随的行為またはその延長もしくは外形上下請負人の事業の範囲内に含まれる行為によつて他人に損害を加えたときは、右第三者に対し、直接または間接に元請負人の指揮監督関係が及んでいる場合にかぎり、右第三者の行為は元請負人の事業執行についてなされたものとして元請負人が右第三者の不法行為につき民法七一五条の責に任ずるものと解すべきことは当裁判所の判例(最高裁昭和三四年(オ)第二一三号、同三七年一二月一四日第二小法廷判決、民集一六巻一二号二三六八頁)とするところである。

本件についてこれをみるに、原審の確定した事実関係によれば、本件工事の元請負人の地位にある上告会社は、その社員で土木技術者の訴外内田恒則を工事の責任者として現場に詰めさせて、下請負人である訴外佐藤徳之の工事施行を指揮監督させていたばかりでなく、右佐藤の被用者で工事の現場責任者である訴外山崎鋤身に対しても上告会社の直接の被用者と同様の指揮監督をしていた、というのであるから、本件事故の発生状況につき原審の認定した事実関係のもとにおいては、上告会社は、その被用者と同視すべき右山崎が上告会社の業務執行中その過失により右事故を惹起したものとして、上告会社の損害賠償責任を肯定した原判決(その引用する第一審判決を含む。)の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は独自の見解によつて原判決の右判断を非難するにすぎないもので、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)

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